龍谷大学犯罪学研究センター招聘研究員の李 怡修先生より、台湾の状況をご紹介いただきました。
台湾ではフラッシュメモリ記憶装置を持参する方法などにより、ごく少ない手数料で、証拠を電子的な方法で入手することができます。
台湾の刑事記録閲覧の電子化
執筆者: 李 怡修 龍谷大学犯罪学研究センター 招聘研究員
寄稿日: 2021年1月20日
台湾では2015年頃から、法廷IT化の一環として、記録閲覧の電子化の整備も始まっています。刑訴法自体の改正は行われていませんが、台北地区の3つの裁判所をはじめとして、複数の裁判所で試行が始まっています。
記録閲覧について、検察官が事件を起訴した時に、一件記録(起訴するまでに収集された原則として全ての記録)が裁判所に送致され(刑訴法264条3項)、弁護士は刑訴法33条1条により記録を閲覧・謄写します。
記録を入手する方法について、かつては、従来は裁判所の閲覧室でコピーしたり、撮影したりするという方法がとられていました。記録閲覧の電子化の整備により、裁判所はスキャンセンターを設置し、送致されてきた記録を全部PDFする作業を行うようになりました。弁護士はネットまたはファックスで申請すれば、3日以内電子的な記録を入手できます。
費用について、手数料として、当該審級の電子記録は、台湾ドル100元(日本円380円程度)がかかります。他の審級に属する電子記録は、台湾ドル200元(日本円760円程度)になります。上記両方を併せて請求する場合、台湾ドル200元となります。DVDの費用として、1枚台湾ドル100元が必要ですが、フラッシュメモリ記憶装置を持参する場合、この費用は不要になります。なお、郵送費は実費です。
こういった電子記録の閲覧は、台湾全体の裁判所に広がりつつあります。現在、地裁レベルでは、台北地区3つの裁判所と台南地方裁判所で全刑事事件の記録閲覧電子化が行われていることが確認できました。高等裁判所においても、案件によって記録の電子化がなされています。他方、裁判所だけでなく、検察署においても記録の電子化が進んでいます。検察が記録を電子化し、起訴する際、当該事案の電子記録を裁判所に送り、共有するという形になります。
いずれにせよ、台湾における記録閲覧の電子化は全面化にするのは時間の問題であり、これから記録の安全性、そして法廷IT化について、どのように行えば審理がさらにスムーズに進行できるかという点が課題となると予想されます。