当会は、本日2021年6月3日付で、
『証拠開示のデジタル化を求める申入書(PDF謄写の運用開始について)』
を、東京地検、大阪地検の検事正に宛てて発送いたしました。
申し入れ事項は下記の通りです。
貴庁における証拠開示について、謄写事業者が証拠書類のPDFを作成し、メディアに格納して弁護人に交付する運用を開始することを求める。
以下、本要望書に至る経緯と、内容の説明をいたします。
当会は2020年11月に、『証拠開示のデジタル化を求める要望書』に署名の募集を開始しました。同要望書には多くの賛同をいただき、最終的に1万3000筆超の署名が集まりました。
2021年3月12日、当会は、『証拠開示のデジタル化を求める要望書』を政府宛に発送しました。
それ以後、証拠開示のデジタル化に関連する様々な動きがありました。
同要望書の発送日となった3月12日には、参議院予算委員会において、三宅伸吾議員から、法務省に対して、証拠開示のデジタル化に関する質問がおこなわれました。
三宅伸吾議員が複合機のスキャン機能による謄写の可否等について質問したのに対して、
- 謄写の趣旨を全うすることになるのであればスキャン機能による謄写をさせることも謄写の機会を与えたこととなる(刑事局長)
- 「刑事手続のIT化を積極的に進めていくと言う視点に立って、現行法の運用に際しても、委員御指摘の点を含めて、法務省としてどのような取組ができるか、どのような利便性向上策が図れるか、検討してまいりたい」(法務副大臣)
という答弁がなされ、法務省が証拠開示のデジタル化について一定の積極的な態度を示しました。
→動画
3月23日には、法務省に、「刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討会」が設置されました。
同検討会では、既に3回の会議が実施されています。
証拠開示のデジタル化に関しても議論の対象となり、総論と して証拠開示のデジタル化に反対する委員等はいない状況と見られます。
5月11日には、自民党の動きもありました。
自由民主党行政改革推進本部規制改革等に関するブロジェクトチー 厶行政改革推進本部規制改革等に関するPTによる、
「デジタル化社会からデータ利用型社会へ(中間報告)」
は、証拠開示のデジタル化について
- 「事案に応じて紙から電磁的記録媒体への謄写が可能となるよう、速やかに謄写環境を整備し、刑事弁護の事務合理化を進めることで、刑事司法への国民の信頼を高めるべきである。」
と指摘しました。
→データ
5月31日には、NHKによる検事総長のインタビューも報道されました。検事総長は、
- 「社会全体が急激にデジタル化 する中、司法の分野だけが旧態依然として、分厚い書類を持ち込んで仕事をしていることは考えられないこと だ。」
と発言しています。
日本国内においても、証拠開示のデジタル化に向けた流れは確実に動き始めています。
当会はこのような情勢も踏まえ、「足下からの証拠開示デジタル化」に向けた取り組みを、検察庁に求めることといたしました。
少なくとも都市部の検察庁には、庁内等に謄写事業者が存在し、現実に複合機を用いて、証拠書類を紙から紙へコピーする作業をおこなっています。この
- 「紙から紙へ」
という作業を、
- 「紙からPDFへ」
という作業に置き換えるだけで、証拠開示のデジタル化は一定程度実現できることとなります。
もちろん、謄写事業者の手数料はある程度発生するだろうこと、謄写事業者がいない地域もあることなどからすると、到底完全な解決とは言えません。とはいえ、部分的であったとしても、解決に向けて進んでいるのと、進んでいないのとでは、意味が全く違います。
まずは簡単に実現できるところからでも、検察庁には取り組みを始めてもらいたいと考えます。
そこで、代表的な都市部の検察庁として、東京地検と大阪地検の2庁を選択し、謄写事業者によるPDF謄写の運用開始を求める申入書を提出しました。
検察庁が、足下から、一刻も早く証拠開示のデジタル化に取り組みを始められることを強く期待します。